めまい外来
当院グループは平成元年より様々なめまいに悩む多くの治療に携わってきました。当院を訪れる患者さんのほとんどは、数週間~数ヶ月病院で治療しても治らず、どうすればいいのか悩んでいる人ばかり。当院の専門外来は、患者さんと一緒になって希望の光を見つけるため日々診療に勤しんでいます。
めまいの症状があると、「メニエール病じゃないの」と友人から聞いたことはありませんか。
実は、めまいのうちメニエール病によるものは約20%であるのに対し、良性発作性頭位めまい症は約60%にものぼるといわれています。
また、めまい全体の20~25%は原因不明とされており、近年ではPPPDという原因不明めまいの診断基準が定まってきました。PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)とは 急なめまいを発症後、急性期症状は改善したにも関わらず、雲の上を歩いているような状態が、3 ヵ月以上にわたってほぼ毎日みられる 疾患です。PPPDに対しても鍼灸治療は有効です。
メニエール病については、女性に多く発症し、はじめは突発性難聴と診断されるケースも少なくありません。また、繰り返し発症し、どんどん悪化していく病気でもあります。そのため、患者さん一人ひとりと向き合い、二人三脚でこれからの治療、対策をおこなっていきます。メニエール病には鍼灸治療が最も効果的です。共にめまい、難聴を克服していきましょう。
当院では、日本耳鼻咽喉科学会、日本小児耳鼻咽喉科学会、日本めまい平衡医学会、全日本鍼灸学会にも参加し、そこで得たものを治療の現場にフィードバックしております。
こんな症状は赤信号! 一日でも早い治療をおこないましょう
- グルグルめまいがしている
- ふわふわ浮いている感じがする
- 長期間めまいに悩まされている
- 何度もめまいを繰り返す
- めまいだけでなく聞こえも悪くなった
- 体を起こすとめまいがする
- 朝起きれない
- 病院で治療しても変化がない
- 妊娠中・癌・糖尿病で薬が使えない
メニエール病
メニエール病とは
めまいといえばメニエール病と言われるほど有名ですが、めまいとは
- グルグル回っているように感じる(回転性めまい)
- フワフワしたところを歩いているように感じる
- 頭がグラグラする
といった症状の総称で、めまいの種類や、それにともなってあらわれる症状によって病名も変わってきます。めまいの原因をしっかりと診断し、的確な治療をして楽になりましょう。
患者さんがメニエール病かなと思うときは、ほとんどがめまい症状しか出ていない時です。それはメニエール病ではありません。また、頭がフワフワする、ぼーっとして集中できないといっためまいもメニエール病とは違います。
それでは、メニエール病とはどんな病気でしょうか。
患者さんがメニエール病を疑わなければならない症状は、「めまい・耳鳴り・難聴」があらわれた時です。激しいめまいを繰り返しているときは要注意です。
また、メニエール病を発病する患者さんの共通点、原因には
- ストレス
- 睡眠不足
- 疲労
- 気圧の変化
- 几帳面な性格
- 女性ホルモンの変化
が関係しています。
症状と診断基準
メニエール病は、何の誘引もなく突然、回転性(ぐるぐる回る)めまいが起こり、めまいと同時に、あるいはめまいの少し前から、片耳に耳鳴りや耳の閉塞感、難聴が起こります。
めまいを繰り返す間隔は人によって違い、数日、数週間、数カ月、あるいは1年に1回などさまざまです。
激しいめまいは、普通30分くらいから数時間続き、めまいの軽快とともに耳鳴り、耳の閉塞感、難聴は軽くなったり消失したりします。しかし、めまいを何回も繰り返しているうちに、めまいがおさまっても耳鳴りや難聴は軽快しないようになります。
めまいが激しい時は、これらの症状以外にも吐き気、嘔吐、冷や汗、動悸などが起こることもよくあります。
メニエール病は「くり返す」エピソードがあって初めて診断できるため、十分な問診が必要です。めまいの診察では体のバランスを調べる検査や眼振検査をおこないます。聴覚症状に対しては耳内を観察し、聴力検査を行います。
症状がめまいのみでも、隠れた難聴がある場合を想定して聴力検査を行う必要があります。逆に聴覚症状のみでも、隠れためまいがないか眼振検査を行う場合があります。
聴力検査では、メニエール病に特徴的な難聴が認められます。特徴は、低音障害型(低い音が聞こえにくい)あるいは水平型で補充現象(音が響いて聞こえる)などが確認されます。
また、厚生省特定疾患研究班調査によると、メニエール病は女性に多く、発症年齢は30歳代後半から40歳代前半に最も多く発症しています。
メニエール病の診断兆候
メニエール病の特徴は
- 繰り返すめまい発作
- 耳鳴り
- 難聴
- 内リンパ水腫
ということがあげられます。
内リンパ水腫
内リンパ水腫は、内耳の中の内リンパ液が過剰になり、内耳が腫れた状態になることです。
内耳はカリウムに富んだ内リンパ液で充填された膜迷路と呼ばれる器官と、骨迷路と膜迷路の間を充填するナトリウムに富んだ外リンパに別れています。
メニエール病の本体である内リンパ水腫(膜迷路に内リンパ液が過剰に溜まり、膨らんだ状態である)の内圧上昇により内リンパと外リンパを隔てている膜が膨張し、ついには破裂し、カリウムに富んだ内リンパとナトリウムに富んだ外リンパが混合し、平衡や聴覚をつかさどっている感覚細胞が化学的刺激を受けること、あるいは物理的な刺激を受けることで、激しいめまいや聞こえの症状としてあらわれます。
内リンパと外リンパを隔てている膜は短時間で閉鎖しますが、再度内リンパ液が溜まるとまた膨張・破裂を繰り返し、めまいや聞こえの症状も繰り返すことになります。
感音性難聴
メニエール病は、感音性難聴に属します。感音性難聴とは、耳にある鼓膜や中耳炎という病名にもなっている中耳(ちゅうじ)と呼ばれる部分よりも内側の障害に起因して聞こえなくなるものをいいます。
音は空気が振動し、耳の穴を通り鼓膜へぶつかってその振動が蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる器官まで伝わります。蝸牛で空気の振動が電気信号に変換され、その電気信号が脳へ伝えられてはじめて音として認識されます。
この音の伝達過程の中で蝸牛より外側が障害され引き起こされる難聴を伝音性難聴、内側が障害され引き起こされる難聴を感音性難聴とそれぞれ呼んでいます。
感音性難聴の症状としては、難聴のほかに蝸牛の障害として補充現象という音が過剰に聞こえてしまう症状や、高音部分の聴力低下に伴う聞き間違いといった症状が出てきます。
一般的に感音性難聴を発症した場合、構造的な問題から伝音性難聴よりも症状は強く、回復しにくい傾向にあります。突発性難聴やメニエール病、ムンプス難聴などがこの難聴に分類されます。
低音障害型難聴
■低音障害型難聴
■水平型難聴
低音障害型難聴は、休に低い音を感じる神経が障害された状態です。
典型例では、聴力検査で250Hzを中心に谷状の感音難聴がみられます。蝸牛の中心部が障害された場合に起こりますので、内リンパ水腫の初期に起こりやすい難聴です。
初めて発症した場合には、ストレス性の血行障害やウイルス感染による一時的な低音障害型突発性難聴によるものか、蝸牛型メニエール病の初回発作かどうかの区別がつきませんので、再発に気を付けなければなりません。
当院では、病院で突発性難聴と診断されたが、その後、何度もめまいと難聴を繰り返し悩んでいると相談される患者さんも少なくありません。
※参照 メニエール病診療ガイドライン
厚生労働省難治性疾患克服研究事業
前庭神経機能以上に関する調査研究班
良性発作性頭位めまい症
良性発作性頭位めまい症とは
めまいの症状のうち、約60%は良性発作性頭位めまい症といわれるほど多い病気です。この病気は、内耳の障害が原因で生じるめまいのひとつです。
耳のいちばん奥にある内耳には、聴覚と平衡感覚の情報を電気信号に変えて脳に送るという働きがあります。体を動かしていないのに内耳から「動いている」という信号が送られてきたときなど、内耳からの動きを伝える信号と目や筋肉からの信号が一致しないとき、めまいが生じます。
内耳には卵形嚢(らんけいのう)という器官があり、平衡感覚のうち垂直方向を感知する器官です。この中には炭酸カルシウムでできた耳石(じせき)があり、頭の傾きに応じて耳石が動くと、「傾いている」という信号が脳に送られます。耳石は常に代謝していて、はがれた細かいカスが卵形嚢にたまっていきます。
これは浮遊耳石ともいわれ、何かの拍子で三半規管の中に入り込んでしまうことがあります。すると、三半規管内のリンパ液の流れが誘発され、実際には頭は動いていないのに、内耳から「動いている」という信号が脳に送られます。これにより生じるめまいが良性発作性頭位めまい症で、10~20秒と、比較的短い時間で治まるのが特徴のひとつです。
症状
主な症状は、目が回る、フワフワするなどのめまいで、吐き気を伴うこともあります。めまいが生じやすいのは、寝返りをうったとき、寝ている状態から起き上がったとき、急に後ろを振り向いたとき、急に上を向いたときなど、頭を大きく動かしたときです。めまいはたいてい、10~20秒ほどで治まります。
なりやすい人
長時間頭を動かさず同じ姿勢でいる人が良性発作性頭位めまい症になりやすいです。良性発作性頭位めまい症と診断される方の約50%はデスクワークや流れ作業などをおこなっています。低い枕で寝ている人、寝返りの回数が少ない人も、良性発作性頭位めまい症になりやすいと考えられています。
PPPD
持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)とは
PPPDとは急なめまいを発症後、急性期症状は改善したにも関わらず、雲の上を歩いているような状態が、3ヵ月以上にわたってほぼ毎日みられる 疾患です。
PPPDの特徴
- 急性のめまいから、慢性の持続性のめまいに移行したものである。
- PPPDに先行して、急性のめまいであるBPPV(良性発作性頭位めまい症)や前庭神経炎などがあり、パニック発作や、心因が先行することもあります。
- 立位、体動、視覚刺激による症状の誘発が見られる。
- 他の前庭疾患や精神疾患を合併する場合もあるが、この疾患のみでは説明できない。
- 不安症やうつの合併がある
めまいを誘発する増悪因子
- 立ったり歩いたりすること
- 体を動かしたり動かされたりすること
- 複雑な模様や激しい動きを見ること
体を動かしたり、動かされたりすることには、エスカレーター、電車、バスへの乗車など、複雑な模様や激しい動きのある映像を見ることには大型店舗の陳列棚、細かい書字、映画、スクロール画面、ドローン撮像動画などにより症状は増悪します。
PPPDの治療
PPPDは、従来の恐怖性姿勢めまい(PPV)と類似した概念であり、心療内科での認知行動療法と抗不安薬ないし選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRIで対処しています。
もともと、めまいが続いているだけでもストレス、不安、恐怖などが蓄積するため安定剤や抗うつ薬が処方されやすいです。
PPPDは、長期に渡るめまいのストレスから首周りの過緊張が多々見られます。また、年齢によっては頚椎症という首の骨が変形して耳に関係する血液循環を傷害してしまうケースも少なくありません。鍼灸治療では、耳や首周りだけでなく体の様々な苦痛を取り除きながら自律神経系、めまいに関係する内耳の機能改善をおこないます。
子供のめまい
子供に最も多いめまいで起立性調節障害という病気があります。
一般的には、朝起きれない原因として起立性調節障害を診断されることもあります。
症状は立ち上がった時の「眼前暗黒感」、「ぐらぐらするめまい、立ちくらみ」、「嘔気」、「頭痛」、「腹痛」などです。
したがって、問診上で典型的な回転性めまいの訴えの場合には起立性調節障害以外の他のめまい疾患を考えるべきです。
起立性調節障害とは
起立性調節障害は、自律神経系の異常で循環器系の調節がうまくいかなくなる疾患です。
主に小学生中学年から中学生の思春期前後の小児に多く見られ、起立時にめまい、動悸、失神などが起きる自律神経の機能失調です。
はじめは、午前中は調子が悪く、脳に十分血液が通わないため、授業や仕事に集中出来ないことが多いですが、夕方には回復するため、「怠け病」と扱われて辛い思いをすることもあります。
また、朝起きれない、頭が痛い、学校に行きたくないなど「いじめかな?」ともとられるような不登校の症状ですが、本人の意志とは無関係にあらわれる症状です。れっきとした病気なので治療が必要となります。
起立性調節障害の多くは、自律神経に関係する末梢血管交感神経活動が低下してしまう病気です。
次のような症状は、起立性調節障害かもしれません。
診断は、次に掲げる「チェックリスト」うち3つ以上当てはまり、かつサブタイプのいずれかに合致することとなっています。 (起立性調節障害サポートグループ)
チェックリスト
- 立ちくらみやめまい
- 起立時の気分不良や失神
- 入浴時や嫌なことで気分不良
- 動悸や息切れ
- 朝なかなか起きられず午前中調子が悪い
- 顔色が青白い
- 食欲不振
- 腹痛
- 倦怠感
- 頭痛
- 乗り物酔い
詳細は、起立性調節障害専門ページをご覧ください
メニエール病の治療実績
下のグラフは、実際に当院で鍼灸治療を受けた患者さんの治療経過です。
めまいの症状はなかなか表現しにくいので、聴力の変化を一部ご紹介します。
■5歳女性
発症年月日:2009年7月
初診日:2009年9月
治療前検査日:2009年8月
治療中検査日:2010年4月
備考:ムンプス難聴
■9歳女性
発症年月日:2009年7月
初診日:2009年8月
治療前検査日:2009年8月
治療中検査日:2010年4月
備考:突発性難聴
■10歳女性
発症年月日:2015年11月
初診日:2016年2月10日
治療前検査日:2016年1月
治療中検査日:2016年7月
備考:突発性難聴
■10代女性
発症年月日:2009年5月
初診日:2009年7月
治療前検査日:2009年7月
治療中検査日:2009年8月
備考:突発性難聴
■20代女性
発症年月日:2009年4月
初診日:2009年5月
治療前検査日:2009年4月
治療中検査日:2009年5月
備考:突発性難聴
■30代女性
発症年月日:2012年6月
初診日:2012年6月
治療前検査日:2012年6月
治療中検査日:2013年1月
備考:突発性難聴
■30代女性
発症年月日:2016年1月
初診日:2016年2月
治療前検査日:2016年2月
治療中検査日:2016年2月(鍼灸治療後2週間)
備考:メニエール病
初診の鍼灸治療でめまいがほぼ無くなる
■30代女性
発症年月日:2012年5月
初診日:2012年10月15日
治療前検査日:2012年10月12日
治療中検査日:2012年1月17日
備考:メニエール病
発症5か月後に来院、めまいはフラフラ
程度で、難聴が主症状
■40代女性
発症年月日:2013年6月
初診時:2013年8月
治療前検査表:2013年6月
治療中検査表:2013年10月
備考:メニエール病
めまい、難聴とも強く現れていた。
■50代女性
発症年月日:2009年11月
初診日:2009年11月
治療前検査日:2009年11月
治療中検査日:2010年1月
備考:メニエール病
めまいが激しい為、在宅での治療
めまいのツボ
実際の治療では、めまいに至った原因を客観的に追求し、患者さん一人ひとりに最適な治療を行っていきます。
一般的な鍼灸治療としては耳の周囲にある「耳門(じもん)」、「聴宮(ちょうきゅう)」、「聴会(ちょうえ)」というツボを使用することが多く、また、耳を含めた首から上の血流改善に効果がある「天柱(てんちゅう)」、「完骨(かんこつ)」といったツボも頻繁に使われます。
*患者さんの症状によっては腰や手、足にあるツボに治療を行うこともあります。
内関は、手の平側で、手首のシワから指3本分上に位置するツボで、めまい、ストレスがたまった人、情緒不安定、うつ症状、不眠症、車酔い、あがり症などの症状のによく使われています。
内関を刺激することで、普段から精神安定をもたらし、冷静さを保てるようになります。また、百会と合わせて使用することで相乗効果がうまれます。
心配性な方、トラウマがフラッシュバックしてしまうような方には、普段からここに貼るタイプの鍼を使用することもあります。また、不安が強い方、寝つきが悪い方には、寝る前に自分で刺激するといいでしょう。
百会は、頭のてっぺんにあるツボで、全身にある経絡が交わるところで、全ての臓器と繋がっているとされています。そのため、全身的に自律神経のバランスを整え、活性化してくれます。
ストレスが蓄積した時、不眠、不安が強い時、症状が長期間続いていることが原因でめまいが起こっている時に使用するツボです。 女性が起こしやすい脳貧血によるめまい、頭痛などにも効果的です。
三陰交は、女性を治療するうえで代表的なツボです。
主に、女性ホルモンの働きを整え女性らしくしてくれるツボです。
三陰交は、生理痛を和らげたり、生理周期を整えたりすることで生理不順や更年期症状を和らげ随伴症状であるめまいの緩和につながります。