20代前後に多いクローン病

クローン病専門外来

クローン病の症状には鍼灸治療が有効です

クローン病とは、大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称を炎症性腸疾患といい、狭義にはクローン病と潰瘍性大腸炎に分類されます。

クローン病は主として若年者にみられ、口腔にはじまり肛門にいたるまでの消化管のどの部位にも炎症や潰瘍(粘膜が欠損すること)が起こりますが、小腸と大腸を中心として特に小腸末端部が好発部位です。非連続性の病変(病変と病変の間に正常部分が存在すること)を特徴とします。それらの病変により腹痛や下痢、血便、体重減少などが生じます。

クローン病の治療は、薬物治療などの内科治療と手術による外科治療を主としていますが、いっけん症状が落ち着いていても、ひそかに病気は進行すると言われています。治療を継続しつつ、定期的な画像検査などによって病気の状態を把握することはきわめて大切です。
...クローン病(指定難病97)

このことは、遺伝や免疫異常がクローン病の発症原因の一つとして言われているからです。今苦しんでいる症状を追っている内科治療、外科治療では追いつかない状況です。そんな時に手助けできるのが、自然の摂理に則った伝統医学の鍼灸治療です。

鍼灸治療は、西洋医学のように目に見えた形で治療効果を証明する研究が進んでおらず代替医療という形で認識されやすいですが、近年、クローン病に対する治療研究も進み、その効果が解明されてきました。鍼灸治療は、今苦しんでいる症状を和らげるだけでなく、予防管理して再発防止の助けとなる治療法です。長年お悩みの方、手術後の管理と再発防止をご希望の方はお気軽にご相談ください。

クローン病の症状

自覚症状

クローン病の症状は患者さんによって千差万別で、侵される病変部位(小腸型、小腸・大腸型、大腸型)によっても異なります。その中でも特徴的な症状は腹痛と下痢で、半数以上の患者さんでみられます。さらに発熱、下血、腹部腫瘤、体重減少、 全身倦怠感 、貧血などの症状もあらわれます。

ここまでわかったクローン病に対する鍼灸治療

自覚症状を軽減し、悪化しないようにコントロールする

過敏性腸症候群の患者に対する鍼灸治療の効果-条件反転法による検討... 松本 淳ら

4年以上の罹病期間を有し、長期の薬物療法を受けているIBS4例とクローン病1例に対する鍼灸治療の1事例研究法(条件反転法)による臨床効果を示します。この結果として鍼灸治療で症状は軽減し、無治療期間で悪化するパターンを呈し、鍼灸治療が症状コントロールに有効であることを示しました。

炎症を引き起こす免疫細胞 Th17をTreg細胞を増やすことで抑制させる

Moxibustion and Acupuncture Ameliorate Crohn's Disease by Regulating the Balance between Th17 and Treg Cells in the Intestinal Mucosa... Chen Zhaoら

クローン病患者92人を、1:1の比率で治療群と対照群に無作為に割り当てた研究では、足三里、三陰交等のツボへの鍼灸治療がクローン病患者のTh17細胞の数を減少させ、Th17関連分子IL-17とRORγtの発現を下方制御し、Treg細胞の数を増加させ、Treg転写因子FOXP3の発現を上方制御することで腸粘膜の炎症が軽減されることを示しました。

炎症反応CRPを大幅に低下させヘモグロビンレベルを増加させる

上記の結果により、鍼灸治療によって、患者の CDAI スコアが大幅に低下し、生活の質に関連する IBDQ スコアが増加しました。さらに、患者のC反応性タンパク質レベル(CRP)が大幅に低下し、貧血症状で低下したヘモグロビンレベルが増加することで腸粘膜の炎症の軽減に繋がると示唆されました。

脳領域の異常なReHo値を回復させることで腸機能だけでなく精神的にも安定する

Different brain responses to electro-acupuncture and moxibustion treatment in patients with Crohn’s disease ...Chunhui Baoら

クローン病患者52人のうち均等かつ無作為に選んだ36人のクローン病患者と36人の健康な被験者を腹部にある天枢などのツボに週3回、12週間鍼灸治療をすることで脳機能活動に変化を及ぼすかをfMRIを利用して調べた。

結果として、クローン病患者は健康な被験者よりさまざまな脳領域のReHo値が有意に増加または減少しており、複数の脳領域の異常なReHo値が回復することが判明した。鍼灸治療は、脳腸相関とも関係が深い自律神経や、視床下部ー下垂体ー副腎系(HPA軸)に関係する脳領域に変化をもたらします。このことは、HPA軸が正常に近付くと、腸機能だけでなく精神的にも安定するため、より健康度は高まると考えられます。

クローン病に効果のある鍼灸治療

クローン病の治療

当院では、治療の前に診察をします。これは、当たり前のことかもしれませんが、当院ではクローン病という難病に苦しむ患者さん一人ひとりの状態を細かく把握して、患者さんに合わせたより良い治療をすすめたいからです。

クローン病の治療

診察とは、今までの治療経験や症状経過をお聞きする問診だけでなく、現在のからだの状態を正確に把握するため、そしてもともとお持ちの体質との因果関係を確認するためでもあります。

確認内容としては、お腹の状態を触って冷えや硬さがあるか、脈をみて腸に関係する自律神経が乱れていないかなどを確認します。その他顔色や舌の状態で判断できる内容もあります。

診察が終わった後は、患者さんにご自身の状態を把握していただき、これからの治療方針をご説明して治療をしていきます。

クローン病の治療

鍼灸治療を経験したことのない患者さんからは、「痛いですか」や「お灸は熱くないですか」など不安を抱く質問をされることもあります。

当院では、世界一精密で安全、清潔な鍼を使用します。これは、縫い針(約0.6mm)のような太い針ではなく、世界一細い0.10~0.14mmという直径の髪の毛と同じくらいの使い捨て鍼を使用します。

クローン病の治療

実際の鍼灸治療ですが、現在確認された症状を治療する西洋医学とは違い、発症した原因の体質、発症する過程に対してもアプローチする医学です。そのため、クローン病の代表的な症状である腹痛や下痢に対して治療するだけでなく、多くは虚症状体質(腸が弱い)に対しての治療もおこないます。

クローン病の治療

これは、寛解導入するためのステロイド(免疫抑制)や寛解維持の免疫調節剤、ステロイド抵抗性の難治症例において寛解導入、および、寛解維持を目的の抗TNF-α抗体製剤を自分自身でおこなえるよう、全身の体づくりを目的とした体質改善を鍼灸治療が手助けするということです。もちろん、ステロイドのような副作用や依存性は一切ありません。また、手術を経験してしまった患者さんの体調管理にも一役買ってくれます。