潰瘍性大腸炎専門外来

クローン病専門外来

現代のストレス社会において、体におけるストレスの影響は度外視できなくなってきました。厚生労働省の国民生活基礎調査でも約半数の人は悩みやストレスを抱えており、同省の労働安全衛生調査でも働く人の58.0%が仕事や職業生活において強い不安、悩み、ストレスを感じているというデータが出ています。

ストレスと言えば自律神経の乱れと想像する人も少なくないかもしれません。自律神経が関係する病気としては自律神経失調症だけでなく、胃腸など消化器疾患が多くあげられます。そのなかで、近年では過敏性腸症候群や潰瘍性大腸炎、クローン病が見過ごせない病気となっています。

潰瘍性大腸炎でお悩みの方、ステロイドやメサラジンによる発熱、発疹、下痢、白血球減少の副作用でお悩みの方、手術後の管理と再発防止をご希望の方はご相談ください。

潰瘍性大腸炎とは

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。

特徴的な症状としては、下血を伴う(または伴わない)下痢と頻繁に起こる腹痛です。病変は直腸から連続的に、そして上行性(口側)に広がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に拡がります。

この病気は病変の拡がりや経過などにより下記のように分類されます。

  1. 病変の拡がり:全大腸炎、左側大腸炎、直腸炎
  2. 病期:活動期、 寛解期
  3. 重症度:軽症、中等症、重症、劇症
  4. 臨床経過: 再燃寛解型、慢性持続型、急性劇症型、初回発作型

日本における潰瘍性大腸炎の患者数は166,060人、1000人に1人の割合です。

発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性では25~29歳にみられますが、若年者から高齢者まで発症します。男女比は1:1で性別に差はありません。
...難病情報センター(指定難病97)

潰瘍性大腸炎の症状

自覚症状

潰瘍性大腸炎の症状は、下痢(便が軟らかくなって、回数が増えること)や血便が認められます。痙攣性または持続的な腹痛を伴うこともあります。

重症になると、発熱、体重減少、貧血などの全身の症状が起こります。また、腸管以外の合併症として、皮膚の症状、関節や眼の症状が出現することもあります。

重症度分類

重 症
軽 症
①排便回数
6回以上
4回以下
②顕血便
(+++)
(+)~(-)
③発熱
37.5℃以上
37.5℃以上の発熱がない
④頻脈
90/分以上
90/分以上の頻脈なし
⑤貧血
Hb10g/dL以下
Hb10g/dL以下の貧血なし
⑥赤沈
30mm/h以上
正常

顕血便の判定
(-)血便なし
(+)排便の半数以下でわずかに血液が付着
(++)ほとんどの排便時に明らかな血液の混入
(+++)大部分が血液

軽症:
上記の6項目を全て満たすもの

重症:
①及び②の他に、全身症状である③又は④のいずれかを満たし、かつ6項目のうち4項目を満たすもの

劇症は、重症の中でも特に症状が激しく重篤なものをいう。発症の経過により急性劇症型と再燃劇症型に分けられる。

潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針

潰瘍性大腸炎の原因

潰瘍性大腸炎を発症する原因は明らかになっていません。これまでに腸内細菌の関与や本来は外敵から身を守る免疫機構が正常に機能しない自己免疫反応の異常、あるいは食生活の変化の関与などが考えられていますが、まだ原因は不明です。

潰瘍性大腸炎の治療法

軽症及び中等症例では5-ASA製薬(メサラジン)を、無効例や重症例で副腎皮質ステロイド薬にて寛解導入を行います。寛解維持にはメサラジン、また、ステロイド薬を投与した場合には免疫調節薬を使用しています。

重症例では入院の上、脱水、電解質異常(特に低カリウム血症)、貧血、栄養障害などへの対策が必要とされています。

劇症例は極めて予後不良であるので、内科と外科の協力のもとに強力な治療を行い、短期間の間に手術の要、不要を決定します。

※メサラジンは大腸病変部位の局所で抗炎症作用を発揮すると考えられています。

内科的治療に反応せず改善がみられない、あるいは症状の増悪がみられる場合には手術適応を検討します。

東洋医学と潰瘍性大腸炎

東洋医学では潰瘍性大腸炎を痢疾(リシツ)と呼んでいて、腹痛・粘血便・濃血を含む便・裏急後重があるものをさします。

東洋医学的考え方の原因としては

  1. 季節の邪気、特に夏の暑さと湿気
  2. 飲食不節(食事量や内容に偏りがあること)
  3. ストレス(精神的負担は 肝の気が滞る)

と考えられています。

体の状態としては

  1. 湿熱痢:脂濃いものや甘いものの過食、飲酒は熱を生じやすく消化・吸収の働きをする脾胃への負担が大きいため余分な水が循環せずに体内に停滞してしまい湿を生む。
  2. 寒湿痢:冷たいものの飲食などで脾を損傷して湿を生じ、そこに寒邪が侵入するなど寒と湿の邪をうけることで生じる。
    どちらも動きを停滞させる性質をもつため気が滞り、腹痛・裏急後重となる。
  3. 陰虚痢:慢性の下痢で体内の水分が消耗され、熱を抑えられず腸管を損傷してしまう。おへその部分に灼熱感を伴う痛みがあり、
    潤いがないため排便しづらくなる。空腹感があっても食べられず
    口やノドの乾きを感じる。
  4. 虚寒痢:生命活動の精は、脾胃で飲食物から作られた後天の精と、親から受け継ぎ腎に貯蔵される先天の精がある。脾と腎は互いに助け協力しあう関係で、長期間の下痢で互いに養えなくなると、次第に陽気という温める働きが失調するため冷えがあらわれる。
  5. 休息痢:慢性の下痢から正気が弱ることで、なかなか解消しない状態。
    脾が損傷することで食欲不振となり、身体を栄養できないため横になることを好む、倦怠感や寒がるなどの症状があらわれる。
    症状が一度安定しても、過労や飲食の不摂生、ストレスなどによって誘発され、再発と緩解を繰り返す。

といった感じです。

西洋医学から見た鍼灸の効果

潰瘍性大腸炎は大腸の病気です。大腸を支配している神経は第X脳神経と呼ばれる迷走神経。迷走神経は自律神経の一つである副交感神経です。鍼灸治療では、自律神経失調症に対する鍼灸治療の効果でご説明していますが、交感神経の過剰な興奮を抑制し、副交感神経の働きを活性化させる効果があります。

また、お灸をすることで腹痛、下痢、そして殺菌、解毒作用や保温効果など様々な症状に効果があるといわれています。これは、お灸をする際、温熱効果と共に、艾(もぐさ)の精油成分である「チネオール」という物質が皮膚から浸透し、血液中の白血球を増加させ、体の免疫力を高めると言われています。このお灸をツボにすることで効果は更に高まります。一般的に潰瘍性大腸炎の症状があらわれた時、血液検査では炎症反応と同時に白血球数が増加してしまいますが、これは体が治そうとしている正常な反応です。西洋医学では数値を下げようとしますが、正常な生体反応としてはお灸をして逆に促進させてあげたほうが症状は治りやすくなります。

お灸の熱刺激は、ヒートショックプロテインを体内で生産し、体の機能を活性化させてくれる作用もあります。ヒートショックプロテインとは、傷んだ細胞を修復する働きを持つタンパク質のことで、白血球(リンパ球)の増加、NK細胞の増強、抗炎症作用など免疫細胞の働きも強化してくれます。

人間の体は、約60兆個の細胞からできており、そのほとんどがタンパク質でできています。私たちの体は、ストレスを受けることによって様々なタンパク質が傷つきます。ヒートショックプロテインのすごいところは、全身どこでも、どんな傷つき方をしても、傷ついた場所へ駆け付けて修復作業をしてくれます。つまり、お灸を体のどこへしても間接的に治療してくれることになります。ツボにお灸をすることによってチネオールの効果と共に治療効果はさらに倍増します。

鍼灸治療

  1. 潰瘍性大腸炎の治療

    近年、免疫性の病気は右肩上がりに増加しています。
    アレルギー性疾患、膠原(こうげん)病、潰瘍性大腸炎も同様です。
    (もちろん免疫によるものだとはっきりしたわけではありませんが、免疫が関与しているということまではわかっています)

    19世紀が感染症、20世紀が悪性新生物(ガン)と戦ったとするなら、21世紀は免疫性疾患との戦いとなるのではないでしょうか。
    最近の研究では、鍼灸治療が免疫機能に及ぼす効果が医学的に大変大きな注目を集めています。 潰瘍性大腸炎の治療

    西洋医学をベースとする病院では原因不明な潰瘍性大腸炎ですが、東洋医学的に原因を探るとその方の生活習慣や環境、体質などが大いに関わっているケースがほとんどなのです。

    鍼灸治療では、潰瘍性大腸炎の症状やステロイドをやめた際の副作用を抑えながら自分自身で治せるよう、全身の体づくりを目的とした体質改善を行います。もちろん、病院で処方されるステロイドのような副作用や依存性は一切ありません。
    そして、体質改善と体調管理を併用することで、発症した生活環境に戻っても再発防止へと繋がるのです。

    潰瘍性大腸炎には、副作用を伴うステロイドのような薬を続けるよりも、西洋医学的な科学的根拠と東洋医学的な自然の摂理に則った考え方の治療となる鍼灸治療が効果的なのです。